全体構想—“植え付けたら売り先が決まる世界”をどう実現するか
- テックベジタス株式会社
- 3 日前
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■ はじめに:農業の不利益性をどう解消するか
前回の記事では、テックベジタスの創業背景と「農業から始まる地域おこし」というビジョンについてご紹介しました。今回は、そのビジョンをどのように実現していくのか、具体的な全体構想についてお伝えいたします。
日本の農業は長年、需給のアンバランスさに悩まされてきました。農家は「作った後にどう売るか」で不安を抱え、バイヤーは「必要なときに必要な量を確保できるか」で不安を抱えています。両者の不安は鏡写しでありながら、解決に向けた仕組みが不足してきました。私たちは、そのギャップを埋めるために「見える化」「同期化」「連動化」の三層構想を描いています。
■ 第一層:生産情報の「見える化」
最初の層は、生産現場の情報を「見える化」することです。
圃場ごとの栽培履歴や肥培管理、収穫見込みなどは、これまで紙のノートや農家の頭の中に留まっていました。これでは、バイヤーが適切な判断を下すのは難しく、農家自身も全体像を把握できないまま作業に追われてしまいます。
そこで私たちは「商品カルテ」を導入しました。作物ごとに品種、栽培方法、栽培期間、予測収量、(病害虫リスク。準備中)などをデータとして蓄積し、わかりやすい形で可視化します。
例えば、葉菜農家(沖縄県南風原町)では、毎日の作業記録を簡単な入力フォームで残すようになりました。すると、これまで感覚に頼っていた「収穫が集中する時期」が数値として現れ、出荷調整がスムーズになりました。その結果、計画的に販促を仕掛けられるようになり、前年に比べ廃棄率が15%減少しました。
■ 第二層:需要との「同期化」
次に重要なのが、需要との同期です。
どれだけ生産側の情報が整っても、需要側のニーズと結びつかなければ価値は半減します。私たちは、バイヤーの「欲しい規格」「欲しい量」「欲しいタイミング」を事前に収集し、予測データと自動的に突き合わせる仕組みを提供しています。
あるレストラン店(沖縄県内)は、ブッフェ用の野菜仕入れにおいて、毎週の変動に頭を悩ませていました。ハイシーズンには客数が急増し、通常の仕入れでは対応できず、かといって余分に仕入れれば廃棄リスクが高まります。そこで、農家側の収穫予測カレンダーと来店予約データを比較してもらった結果、必要量の誤差が従来比で30%減少しました。これは、仕入れ担当者にとっても厨房スタッフにとっても、大きな安心につながりました。
■ 第三層:取引と体験の「連動化」
最後の層は、取引と体験を連動させることです。
農業は単に「作って売る」だけでなく、観光や教育、地域振興と強く結びついています。テックベジタスは、B2B取引の枠を超えて、体験農園や地域観光と接続する仕組みを整えています。
例えば、ある果樹農家(沖縄県南部)は、収穫ピーク時に「農園ツアー」を企画しました。ツアー参加者には事前に商品カルテを提示し、栽培背景を学んでもらった上で収穫体験を実施。その後、収穫した果物をホテルや小売店に届け、POPにはツアーの様子をQRコードで表示しました。この取り組みにより、消費者は「顔が見える商品」を購入でき、農家は新しいファンを獲得。さらに、バイヤー側にとっても「話題性のある商品」として販促に活かすことができました。
■ ロードマップ:90日・180日・365日
三層構想を現実に落とし込むために、私たちは90日・180日・365日のロードマップを描いています。
90日間:データの初期化。カルテ作成、作業記録の型決め、優先作物の選定。
180日間:需給同期の実装。予測カレンダーを運用し、バイヤーとの発注テンプレを整備。販促との同期を試行。
365日間:地域単位の最適化。複数農家を束ね、共同販促や年間プロモーション設計を実施。
このプロセスを経ることで、単一農家の改善から始まり、やがて地域全体の需給バランスを最適化する基盤へと進化します。
■ KPIと成果の見える化
ビジネスとしての効果を測るためには、明確なKPIが欠かせません。
私たちは以下の指標を重視しています。
欠品率
廃棄率
在庫回転率
平均単価の安定性
販路数の拡大
農家とバイヤー双方の満足度
実際に、加工業者(沖縄県内ジュース製造会社)では、規格外果実の仕入れを農業革命と同期させることで、原料調達コストが15%削減されました。さらに、農家側も「捨てるしかなかった果実が収入になる」というメリットを享受。双方のKPIが同時に改善する事例となりました。
■ 構想を支える考え方
ここで強調したいのは、私たちの構想は単なるテクノロジー導入ではないということです。
テクノロジーはあくまで道具であり、本質は「現場のリズムに寄り添うこと」です。農業の世界は気候や地域ごとの特性に大きく左右されます。だからこそ、システム側が現場に歩み寄る設計が必要なのです。私たちのチームは、農家出身者、流通の経験者、ITエンジニアが混在しており、現場とテクノロジーの橋渡しができるのが強みです。
■ おわりに:次回予告
今回は、テックベジタスが掲げる三層構想と、その実現に向けたロードマップについてご紹介しました。
次回は、実際に「agrinex農業革命」というサービスをどのように立ち上げ、どのような機能を提供しているのかを詳しくご紹介します。具体的な画面イメージや導入の流れをお伝えしながら、実際に農家とバイヤーの取引がどのように変化するのかを掘り下げます。
テックベジタスの構想は、机上の理想論ではありません。すでに現場で小さく動き出しており、成果を上げ始めています。次回もぜひご覧いただき、貴社の事業にどのように応用できるかを一緒に考えていただければ幸いです。
<テックベジタス株式会社>
わたしたちテックベジタス株式会社は、ワクワクする農業ビジネスを創出するプロデュース集団です。
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